平成29年10月に徳島大学脳神経外科教授として着任しました。
当大学脳神経外科は昭和49年10月16日に松本圭蔵先生によって開講され、平成9年2月からは永廣信治先生によって率いられてきた伝統ある教室です。平成11年11月からは全国の国立大学に先駆けて脳卒中ケアユニットを開設し、今では年間300症例以上の急性期脳卒中の患者さんが搬送されます。直達手術、血管内手術により多数の患者さんの治療を行っています。また、脳腫瘍、不随意運動、てんかんに対する外科治療も数多く手がけています。研究の分野においても、脳動脈瘤や脳虚血の分野でめざましい業績を上げています。
脳神経外科の領域では、脳動脈瘤や内頸動脈狭窄症、脳動静脈奇形などの分野でその自然歴や外科的治療の成績についてのエビデンスが近年数多く蓄積され、より安全な手術が重要になっています。手術テクニックのマスターのみならず、神経モニタリングや術中血流評価システム、ニューロナビゲーションなどを通して安全な手術が施行されています。また、脳神経外科は脳腫瘍に対する遺伝子解析をベースとした新規治療、頭蓋底腫瘍に対する神経内視鏡の適応など、ますますの進歩が認められる分野となっています。
研究においても、私も手がけてきた神経再生を通して、失われた機能を回復させるべく研究が進んでいます。私は脳動静脈奇形、もやもや病、脳動脈瘤などの難治脳血管障害の外科治療を中心に、頭蓋底腫瘍や脊髄腫瘍などの手術も数多く手がけてきました。
これからの若い先生方にも、安全な外科手術ができるようにトレーニングを積んでもらうとともに研究活動も行って論理的思考を持った脳神経外科医を育てていきたいと考えています。
「臨床医は多くの患者を救えるが、研究をするものはその結果次第で、その何千倍もの患者を救える可能性がある」(徳島大学脳神経外科 永廣信治 前教授のことば)
私たちは動物実験の倫理を遵守し、基礎研究を行っております。内容は多岐にわたりますが、以下代表的なものを示します。
1. Dystoniaモデルマウスの研究
ジストニアの原因として小脳が注目されています。ジストニアモデルマウスを作成し、その病態を研究しております。
2. Huntington病モデルマウスの研究
Q175ハンチントン病モデルマウスの免疫組織学的研究を行っております。機械学習を用いた線条体ストリオソームコンパートメントの同定や、機能異常の研究しております。マサチューセッツ工科大学 McGovern Institute of Brain Research, Graybiel研究室との共同研究です。
3. 6-OHDA片側パーキンソン病モデルマウスを用いたl-dopa誘発性ジスキネジアの研究
パーキンソン病モデルマウスを作成し、その機能的異常の研究を行っております。徳島大学薬学部神経病態薬理学講座 笠原研究室との共同研究です。
4. アデノウィルス (AAV)ベクターを用いた神経トレーシング研究およびオプトジェネティクスまたは脳深部刺激による機能解析研究
ストリオソームに関連する神経トレーシング、オプトジェネティクス研究等を行っております。マサチューセッツ工科大学McGovern Institute of Brain Research, Graybiel研究室、福島県立医科大学 生体機能研究部門 加藤先生との共同研究です。
1.徳島大学工学部知能情報学科 獅々堀研究室と、データベースを用いた機械学習研究やデータマイニングの研究を行っています。
2.ウェアラブルデバイスを用いた研究、脳深部刺激療法に関連した研究を行っています(一部、アメリカピッツバーグ大学との共同研究)。
3.フィールドスタディも行っております(フィリピンの研究者との共同研究)。
4.MRIやPETを用いたジストニア、パーキンソン病、振戦患者の画像研究(徳島大学放射線科、リハビリテーション科の研究者と共同研究)。
徳島大学脳神経外科
Department of Neurosurgery,
Tokushima University Graduate School of Biomedical Sciences
〒770-8503 徳島県徳島市蔵本町3-18-15